1. トップ
  2. スタッフ

映画【ローリング】ROLLING

スタッフ

『ローリング』スタッフ紹介。
文・冨永昌敬

 2013年の春、本作『ローリング』は一般社団法人水戸構想会議の協賛のもと、NPO法人シネマパンチ(水戸短編映像祭実行委員会)代表の平島悠三くん(初めて会った十数年前、彼はまだ水戸市の不良高校生でした)からのお誘いで、まずは短編映画として企画されました。その後これを長編映画として企画を改めるにあたってプロデューサーとして僕と苦楽をともにしてくれたのが木滝和幸さん(『ひゃくはち』『TAP 完全なる飼育』など)でした。木滝さんはローリング製作委員会の中心人物として、監督である僕の意図を可能な限り汲んでくれました。この人の熱意が『ローリング』を転がすエンジンになりました。木滝さん、ありがとう。

 翌2014年初頭に脚本が完成し、制作担当の佛木雅彦くん、助監督の荒木孝眞くんと一緒にロケハンなど諸準備を進めてゆくなか、現場スタッフについてはいわば少数精鋭の、つまり監督である僕が過去に何度か仕事をともにしたことのある人々に「なるべく一人で来てください」と頼みにくいお願いをしながらオファーすることになりました。撮影は同年9月にはじまり、その9月に、8日間の撮影があっというまに終わりました。そんな過密スケジュールのなか撮影が成立したのは、以下にご紹介する勇気あるスタッフ諸兄のおかげです。

 撮影の三村和弘くん(『SR サイタマノラッパー』など)は僕の『シャーリーの転落人生』でBカメを担当してくれた旧友で、彼の良き相棒である照明の中村晋平くん(『マダム・マーマレードの異常な謎』など)とともに、この映画の(僕がたいへん気に入っている)画面づくりに尽力してくれました(凄腕の中村くんは本当に一人で照明を作ってくれました)。撮影中のある明け方、宿舎で目を覚ましたら三村くんが急病で病院に運ばれていました。しかし「きっと三村は帰ってくる」と僕は慌てず待っていましたら、彼は注射一本だけで全快してその日の朝からの現場に復帰してくれました。注射がすごいのではありません、三村くんのプロ意識がすごいのです。三村よ、ありがとう。

 美術の仲前智治さん(『スクラップヘブン』『日々ロック』など)とは、僕にとっては『パビリオン山椒魚』以来4回目のご一緒作品となりました(僕の兄貴のような人です)。とりわけラストシーンの悲しみをたたえた終の住処を作り上げるのに、彼は大いに腕を振るってくれました。衣装の加藤將くんとメアメイクの小濵福介くんは、この5年ほどの僕の作品に欠かせない相棒ですが、いま気づいてギョッとしたのは、メインスタッフに女性が一人もいないことです。とはいえ僕が女性スタッフに人気がないわけでは決してありません。ここに紹介している粋な男たちを、僕が心底好きだというだけです。

 編集の田巻源太くん(『共喰い』『こっぱみじん』など)は、カラーグレーディングを含む仕上げ全般の責任者として、僕が『パンドラの匣』以来その力を全面的に信頼している人です。この人が陰から支えている日本映画の名を挙げたらキリがありません。録音の高田伸也くん(『グッド・ストライプス』『滝を見にいく』など)は大変な売れっ子録音技師なので残念ながら仕上げに参加できませんでしたが、代わって仕上げの整音を引き受けてくれたのは、僕が大学時代からその腕を頼っている山本タカアキくん(『フラッシュバックメモリーズ3D』『白河夜船』など)でした。山本はこれまで何度も僕を助けてくれている一番の親友です。いつもありがとう。

 音楽監督はcombo piano、sigh boatのピアニスト、そしてあのデヴィッド・シルヴィアンの欧州ツアーメンバーとしても知られる渡邊琢磨くんです。僕はもともと彼のファンなのでこんなことを言うのかもしれませんが、自分と同年齢のクリエーターでこの人ほど才能を感じる人物を僕は知りません。この作品のサウンドトラックは、すべて仙台の彼の仕事場でものすごいスピードで作曲録音されました。本当はその場にもっと長くいたかったのですが、彼にものすごいスピードで仕事をさせたのは自分なので、まったく文句を言えません。琢磨くん、やっぱりあなたは天才だ。ありがとう。

 最後に監督の冨永昌敬(僕)です。『亀虫』『パビリオン山椒魚』『パンドラの匣』など、過去に何度か自分で節目と考えた作品がありましたが、この『ローリング』は、とりわけ大きな節目になりそうです。僕は、僕の映画を十数年来ずっと見てくれているお客さんと劇場でお会いするのをいつも励みにしています(過去にいただいた何通ものお手紙とメールは宝物です)。本作『ローリング』は、そんな人たちに(そうでない人たちにも)楽しんでいただける作品に仕上がっていると自負しています。

 本稿は監督である僕(冨永)から、この作品に関わってくれた仲間を僕なりの言葉でご紹介するという形式をとりました。その意図とは、過酷な制作現場をともにしてくれた諸兄への感謝の意をあらわすことを抜きに彼らの名前を挙げることができない、というものでした。よって従来の映画サイトのスタッフ・プロフィール欄にある各スタッフの職歴の詳しさにくらべ、情報としての読みごたえは大きくないかもしれません。しかし彼らがこの映画の現場でどのように活躍してくれたのかを、これを読んでくださったあなたに少しでも知っていただけたら本望です。もしこの映画をあなたが気に入ってくれたとしたら、それは、わが愛すべきスタッフ諸兄の尽力によるものであると、ここに明言しておきます。