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映画【ローリング】ROLLING

プロダクションノート

前編オール水戸ロケ、地域の力添えによって完成した本作

本作『ローリング』は、長編映画としては『パビリオン山椒魚』(2006年)以来となる冨永昌敬監督オリジナル脚本として企画され、撮影は2014年9月、全編オール水戸ロケによって製作された。

2013年夏より、シナリオハンティングや各所への取材を重ね、同時に水戸短編映像祭の場を借り、一般出演者を募るオーディションも催されるなど水戸という街を大きく巻き込んだかたちで映画化は進められていった。

クランクインに先立ち、はじめに朋美(井端珠里)とジュン(星野かよ)の2人の脱衣場面が収められた、劇中に権藤(川瀬陽太)が撮ったとされる盗撮映像が撮影された。そののち水戸市の茨城交通本社操車場にて、元教え子たちに追い回される権藤と、その様を回想し、眺めている権藤自身。という難しいシーンから川瀬陽太がクランクイン。路線バスで水戸中心部を周遊しながらの撮影となった。

続いて主演・三浦貴大がクランクイン。おしぼりの配達業者の主人公、貫一に扮する。大量のおしぼりがベルトコンベヤーでローリングされ、出荷・回収され、また巻かれるといった業務の円環性がこの映画全体を示唆することになる。 本作は企画発足時の取材からロケーション提供に至るまで一貫して水戸のおしぼり会社ヴィオーラ社の全面的なバックアップによって製作されている。 ケガをした脚の傷口を汚れたおしぼりで拭ったことにより男と女が出会う、という奇妙奇天烈なアイディアに、勇気をもって乗ってくれた。

ヒロインをつとめるみはり役・柳英里紗は水戸の歓楽街、大工町を権藤とともに逃げ回るシーンからクランクイン。歓楽街の妖しい煌きのなかでエキストラも交えて自転車、原付スクーターなどを動員した追いかけっこが興じられ、それらを移動車で追いながら入り組んだ大工町の区画を生かした撮影となった。 以降、続々と主要キャストがクランクイン。なかでも貫一の同級生の繁夫(松浦祐也)、田浦(礒部泰宏)、船越(橋野純平)のトリオによってこの映画に底抜けの馬鹿さ加減が加えられる。

劇中のハイライトのひとつでもある貫一とみはりのキスシーンやクライマックスシーンなどをはじめ、多くが歓楽街・大工町で撮影された。歓楽街のど真ん中で撮影したことによってとても良い緊張感が期間中の撮影隊には張りつめていた。撮影は日の出とともに始まり深夜にまで及ぶというスケジュールでクランクアップまで走り抜ける。

ドクイリというクラブのシーンでの200人のエキストラ出演をはじめ、容子(森レイ子)が営むスナックのシーンなどは、実際にその店で働いている方々が中心になって出演。一般のエキストラとは違ったキャスティングが水戸短編映像祭を主催するNPO法人シネマパンチの地域活動の力添えによって実現されたことが地元密着型で撮られた本作の特徴といえる。

2014年9月29日、貫一とみはりのベッドシーンの撮影をもって本編撮影を終了。結果的に、女子更衣室の盗撮映像から撮影を開始し、主演二人のベッドシーンでロケを終えるという「エロティック・コメディ」というジャンルにふさわしいクランクアップとなった。その後3か月にわたり念願のタッグとなる、渡邊琢磨による劇伴音楽などをはじめとしたポストプロダクションが行われた。 なかでもナレーションは冨永昌敬作品の特徴的な印だが、この映画でも大きく全体に響き渡る心臓音となっている。